子犬が突然「オエッ」と吐いてしまう──
そんな経験をした飼い主さんも多いのではないでしょうか。
「食べすぎかな?」「何か悪いものを食べた?」不安になりますよね。
実は、子犬の嘔吐は軽いものから命に関わるものまでさまざまな原因があります。
一度だけなら心配ない場合もありますが、何度も繰り返したり、血が混じるようなら注意が必要です。
この記事では、獣医師の立場から、「子犬が吐く原因」「家庭でできるケア」「病院へ行くタイミング」をわかりやすく解説します。
子犬が吐くのはよくあること?

まず知っておいてほしいのは、子犬の「吐く」は珍しくないということです。
子犬の胃はまだ発達途中で、とてもデリケートです。
少し食べすぎただけでも、胃がびっくりして吐いてしまうことがあります。
特に、以下のようなケースでは一時的な嘔吐が見られます。
– 食事を急いで食べすぎた(早食い)
– 空腹時間が長かった
– 新しいフードに変えた直後
– 緊張やストレスで一時的に胃が動かなくなった
このような嘔吐は、吐いたあと元気で食欲もあるようなら、半日程度様子を見ても構いません。
ただし、同じ日中に何度も吐く・元気がない・下痢もしている場合は要注意です。
子犬が吐く主な原因

① 食べすぎ・早食い
一番多いのがこのタイプです。
ごはんを勢いよく飲み込むと、胃に空気も一緒に入り、膨張して吐いてしまいます。
💡対策:
・1回の食事量を少なめにして、回数を増やす(1日3〜4回)
・早食い防止用の食器を使う
・食後30分は安静にさせる
② 食事の内容や変更
フードを急に切り替えると、胃腸がびっくりして嘔吐することがあります。
また、人の食べ物や脂っこいものを食べると胃炎を起こすことも。
💡対策:
フードの切り替えは1週間かけて少しずつ行いましょう。
最初は「旧フード7:新フード3」くらいからスタートです。
③ 感染症(パルボウイルス・ジステンパーなど)
最も注意が必要なのが感染症による嘔吐です。
子犬は免疫が未熟で、ウイルスや細菌に感染すると激しい嘔吐・下痢・発熱を起こします。
特にパルボウイルス感染症は命に関わることもあります。
このような症状があればすぐに病院へ
– 繰り返し吐く
– 血が混じる
– 下痢や発熱を伴う
– ぐったりしている
感染症の多くはワクチンで予防できます。
子犬の時期は、ワクチンを確実に完了させましょう。
④ 異物の誤飲
ティッシュ、輪ゴム、ぬいぐるみの布など──
子犬は好奇心旺盛で、何でも口に入れてしまいます。
飲み込んだ異物が胃や腸に詰まると、吐いても吐いても出てこない、食べない、元気がない、といった症状が出ます。
⚠️自宅で無理に吐かせるのは危険です。
異物誤飲が疑われる場合はすぐに動物病院へ。
⑤ ストレスや環境の変化
引っ越し・来客・家族の不在などで精神的なストレスを感じると、胃腸の働きが乱れて吐いてしまうことがあります。
💡対策:
・静かで安心できる環境を整える
・急な環境変化を避ける
・普段通りの生活リズムを保つ
⑥ 病気による嘔吐(胃腸炎・膵炎・腎臓病など)
何日も続く嘔吐や、食欲・元気が落ちている場合は、体の内部に異常がある可能性があります。
特に、次のような場合はすぐに病院へ
– 血が混じった吐物
– 黄色や緑の液体を吐く
– 体が熱い、震えている
– 元気がなく、ぐったり
受診の目安

すぐに病院へ行くべきサイン
– 吐く回数が多い(1日3回以上)
– 吐いたあともぐったりしている
– 下痢・発熱・食欲不振を伴う
– 血や異物が混じっている
– ワクチン未接種の子犬
診察時は、吐いた時間・回数・内容(色や量)をメモしておくと診断がスムーズです。
可能であれば、吐いた物をラップで包んで持参しましょう。
自宅でできるケアと予防

1. 食事の工夫
– 一度に食べすぎないよう少量ずつ
– フードは柔らかめにする(お湯でふやかす)
– 急な切り替えを避ける
2. 誤飲を防ぐ環境づくり
– 床に小物を置かない
– 遊ぶときは目を離さない
– 小さなおもちゃや輪ゴムなどは片付ける
3. 生活リズムとストレス管理
– 睡眠時間を確保
– スキンシップで安心感を与える
– 環境音(テレビ・掃除機など)に慣れさせる
4. 定期的な健康チェック
– ワクチン接種
– 寄生虫予防
– 健康診断(体重・便の状態)
子犬が吐いたときの「してはいけないこと」

– 無理に水や食べ物を与える
– 自宅で人間用の薬を飲ませる
– ネット情報だけで判断する
– 吐いた直後に激しく遊ばせる
これらは症状を悪化させるおそれがあります。
まずは安静と観察、そして必要なら早めの受診を。
まとめ:子犬の嘔吐は小さなSOS

子犬の「吐く」は、体からの大切なサインです。
軽い場合もありますが、繰り返すようなら病気が隠れているかもしれません。
大切なのは、「焦らず、観察し、早めに行動する」ことです。
– 吐く原因は食事・誤飲・感染症・ストレスなど多岐にわたる
– 元気がない・血が混じる・続く場合はすぐ病院へ
– 吐いた物を記録・写真・持参すると診断の助けになる
– 普段から食事・環境・予防を整えることが再発防止につながる
子犬の健康は、日々の小さな気づきで守ることができます。
「なんとなく様子が違う」と感じたときこそ、動物病院に相談してみてください。