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猫が水をよく飲む…それって病気?獣医師が原因と対処法を解説します

「最近うちの猫が水をたくさん飲むようになった気がする」

「前より頻繁に水皿に顔をつけている」

そんな変化に気づいたことはありませんか?

猫はもともと砂漠で暮らしていた動物で、水をあまり飲まない習性があります。

だからこそ「急に水をよく飲むようになった」という変化には、健康上のサインが隠れていることもあります。

もちろん、気温や食事の影響で一時的に飲水量が増えることもあります。

しかし、病気の初期症状であることも少なくありません。

この記事では、「猫が水をよく飲む理由」と「受診の目安」 「おうちでできるケア」について、わかりやすくお伝えします。

正常な飲水量の目安を知ろう

まずは、「どのくらい水を飲むと多いのか」を知ることから始めましょう。

一般的に、猫の1日の飲水量の目安は 体重1kgあたり40〜60ml程度 といわれています。

たとえば、4kgの猫であれば160〜240ml前後が目安です。

これは「すべての水分」を含むため、ウェットフードを食べている場合は自然と飲む水の量は少なくなります。

一方、ドライフード中心の食事では、フード中の水分が少ないため、水皿から多く飲む傾向があります。

また、季節によっても差があります。

夏の暑い時期や、冬場の暖房による乾燥など、気温・湿度の変化によって自然に飲水量が増えることもあります。

ポイント

・ 「急に増えたかどうか」が重要です。

・元気や食欲があるなら一時的な変化の可能性もあります。

・気になる場合は、1日の飲水量を実際に計ってみましょう。

猫が水をよく飲む主な原因

水をたくさん飲む理由には、大きく分けて2つのタイプがあります。

①生理的な原因(正常範囲内)

②病気によるもの

それぞれ詳しく見ていきましょう。

① 一時的な生理的な原因

一時的に飲水量が増えるケースは、以下のような状況でよく見られます。

– 夏の暑さや乾燥した環境

– ドライフード中心の食事

– 活動量が多い、運動後

– いたずらや遊びの延長(興味で水を舐める)

このような場合、猫自身の体の調整によるもので、心配はいりません。

特に元気・食欲・排泄が普段通りなら、自然な範囲といえます。

ただし、「前は飲まなかったのに、急に増えた」 「おしっこの量も増えている」といった変化があるときは注意が必要です。

② 病気による飲水量の増加

猫が「急に」または「明らかに」水をたくさん飲むようになった場合、次のような病気が隠れている可能性があります。

慢性腎臓病

猫に最も多い原因のひとつです。

腎臓は、体の老廃物をろ過して尿を作る臓器ですが、加齢や体質によって徐々に働きが弱まっていきます。

腎臓の機能が落ちると、尿が薄くなり、体の水分が逃げやすくなるため、猫は「喉が渇いて水を飲む」ようになります。

特に7歳以上の中高齢猫では要注意です。

初期は元気に見えることも多く、定期検診で偶然見つかるケースもあります。

糖尿病

「よく食べるのに痩せてきた」

「水をたくさん飲む」

そんなときに考えられるのが糖尿病です。

血糖値が高くなると、尿に糖が出て、体内の水分が一緒に排出されてしまうため、猫は喉が渇きやすくなります。

治療が遅れると、脱水や意識障害など命に関わることもあるため、早期発見・治療がとても大切です。

甲状腺機能亢進症

高齢猫によく見られる病気で、体の新陳代謝を調整するホルモンが過剰に分泌されることで起こります。

・落ち着きがなくなる

・よく食べるのに痩せる

・よく動く、夜鳴きする

といった変化に加えて、水をよく飲むようになるのが特徴です。

その他の病気

・肝臓病(体の代謝異常で水分バランスが崩れる)

・子宮蓄膿症(メス猫の子宮に膿がたまり発熱・多飲が見られる)

・投薬の影響(利尿剤やステロイドなど)

これらも原因として考えられるため、「いつもと違うな」と感じたら早めに受診することが安心です。

動物病院を受診すべきサイン

では、どんなときに病院へ行くべきでしょうか?

次のような変化が見られた場合は、早めの診察をおすすめします。

受診の目安

– 水を飲む量が急に増えた

– おしっこの回数・量が増えている

– 食欲が落ちてきた

– 体重が減っている

– 口の中の臭いが強くなった

– 元気がない、寝てばかりいる

これらは「体のどこかに異常がある」サインです。

特に、高齢猫や持病のある猫では早期発見が重要です。

自宅でできるケアと予防法

水をたくさん飲むこと自体は悪いことではありません。

ただし、「自然な水分補給」と「異常な多飲」は見極めが大切です。

そのためにできるケアを紹介します。

水分をとりやすくする工夫

・ウェットフードを取り入れる

  ドライフードに比べて水分量が多く、自然に水分を摂れます。

・複数の場所に水皿を置く

  猫は気分によって飲む場所が変わります。

  キッチン・リビング・寝室など、複数の場所に置くと飲む量が増えます。

・循環式の給水器を活用する

  流れる水を好む猫は多いです。

  清潔に保ちやすく、飲水量アップにもつながります。

清潔な環境を保つ

・水皿は毎日洗う

・トイレも清潔に保ち、排尿量の確認がしやすい環境にする

・フードや水の保管は直射日光を避け、常に新鮮に

清潔な環境は、病気予防の基本です。

健康チェックを習慣に

・年1〜2回の健康診断(特に7歳以上)

・体重、食欲、トイレの変化をこまめに観察

・ 「なんとなく元気がない」ときは早めの相談を

病気の多くは初期では症状が目立ちません。

まとめ:水をよく飲むことは“体からのメッセージ”

猫が水をよく飲むのは、決して悪いことではありません。

しかし、“急な変化”や“他の症状”を伴うときは要注意です。

– 一時的なら自然な生理現象のこともある

– 慢性腎臓病や糖尿病などの病気が隠れている場合もある

– 飲水量・おしっこ・元気・食欲の変化を観察することが大切

– 不安を感じたら、早めに動物病院で検査を

日々の小さな変化に気づけるのは、毎日そばにいる飼い主さんだけです。

「いつもより少し違うかも?」という違和感を見逃さず、愛猫の健康を守る行動につなげていきましょう。

獣医師からひとこと

水をよく飲む猫は、「体が何かを訴えている」ことが多いです。

病気を早く見つけられれば、それだけ長く元気に過ごせます。

焦らず、観察して、必要なときは迷わず相談してくださいね。