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猫の便秘 | 原因と受診の目安を獣医師がやさしく解説します

トイレに何度も入っていきむのに、なかなか便が出ない。

出たとしても、コロコロとした硬い便が少しだけ。

そんな愛猫の様子を見て、

「このまま様子を見ていていいのだろうか」

「便秘くらいで病院に行くのは大げさ?」

と悩まれる飼い主さんはとても多いです。

実際、動物病院の診察室でも「猫が便秘気味で心配です」という相談は頻繁にあります。

猫の便秘は、すぐに命に関わることばかりではありません。

しかし一方で、体調の変化や病気のサインとして現れることもある症状です。

猫の便秘とは?

まずは、「猫の便秘とは何か」を正しく知ることが大切です。

猫の排便は人とは大きく異なり、回数や量には個体差があります。

そのため、猫の便秘は「何日出ていないか」だけで判断できないこともあります。

何日出なかったら便秘なの?

猫の排便回数は、

 ✅ 毎日出る猫

 ✅ 1日おきに出る猫

など、個体差があります。

一般的には、

 ✅ 2〜3日以上まったく便が出ていない

 ✅ 排便しようとして何度もトイレに行くが出ない

 ✅ 強くいきんでいる

といった状態が続く場合、便秘を疑います。

ただし、「1日出ていない=すぐ異常」というわけではありません。

大切なのは、その猫にとっていつもと違うかどうかです。

こんな便や様子が見られたら注意が必要です

次のような変化が見られる場合、便秘の可能性があります。

 ✅ コロコロとした乾いた便

 ✅ 排便時に強くいきむ

 ✅ トイレに長くこもる

 ✅ 排便時に鳴く、嫌がる

 ✅ トイレに行く回数が増えたが出ていない

一時的な変化であれば問題ないこともありますが、数日続く場合は注意が必要です。

猫が便秘になる主な原因

猫の便秘には、さまざまな原因があります。

一つの原因だけでなく、複数の要因が重なって起こることも多いのが特徴です。

ここでは、特に多く見られる原因を解説します。

水分不足や脱水

猫はもともと、水をあまり飲まない動物です。

野生では獲物から水分を摂取していたため、自ら水をたくさん飲む必要がありませんでした。

そのため、

 ✅ ドライフード中心の食事

 ✅ 水飲み場が少ない

 ✅ 水の器が気に入らない

といった状況では、水分摂取量が不足しがちです。

体内の水分が不足すると、便に含まれる水分も減り、硬くなって腸を通りにくくなります。

これが、猫の便秘の大きな原因の一つです。

毛玉や食事内容の影響

猫は毛づくろいをする習性があります。

その際に飲み込んだ毛が腸内にたまり、便の通過を妨げることがあります。

また、

 ✅ 食物繊維が少なすぎる

 ✅ 逆に多すぎる

 ✅ 急なフード変更

なども、便の状態に影響します。

「体に良さそう」と思って選んだフードが、その猫には合っていない場合もあります。

運動不足や環境の変化

運動不足になると、腸の動きも弱くなります。

完全室内飼育の猫では、どうしても運動量が不足しがちです。

また、

 ✅ 引っ越し

 ✅ 模様替え

 ✅ 家族構成の変化

 ✅ 来客

といった環境の変化がストレスとなり、便秘につながることもあります。

腎臓の病気が関係することもあります

すべての便秘が腎臓の病気によるものではありません。

しかし、特に中高齢の猫では腎臓の働きが関係していることがあります。

腎臓の機能が低下すると、体は水分をうまく保てなくなり、脱水気味になります。

すると、

腎臓の病気 → 脱水 → 便の水分が減る → 便が硬くなる

という流れで、便秘が起こることがあります。

 ✅ 水を飲む量が変わった

 ✅ 尿の量が増えた、または減った

 ✅ 体重が少しずつ減っている

こうした変化が便秘と一緒に見られる場合は、体からのサインとして一度動物病院に受診することをおすすめします。

家でできることと、注意してほしいこと

便秘に気づいたとき、「まずは家で何かできることはないか」と考える飼い主さんは多いと思います。

ここでは、家でできる対処と、避けてほしい対応についてお伝えします。

水分摂取を増やす工夫

 ✅ ウェットフードを取り入れる

 ✅ 水飲み場を複数用意する

 ✅ 器の素材や形を変える

 ✅ 流れる水を好む猫には給水器を使う

こうした工夫で、水分摂取量が増える猫も少なくありません。

自己判断でやってはいけないこと

 ✅ 人の便秘薬を使う

 ✅ 無理にお腹を押す

 ✅ 長期間放置する

これらは症状を悪化させたり、別のトラブルを引き起こす可能性があります。

動物病院を受診したほうがよい目安

「どのタイミングで病院に行けばいいのか」

これは、多くの飼い主さんが悩むポイントです。

判断の目安を知っておくことで、迷いが減ります。

受診を考えたいサインと相談のタイミング

次のような場合は、早めに動物病院への相談をおすすめします。

 ✅ 数日間まったく便が出ていない

 ✅ 強くいきんでいるのに出ない

 ✅ 食欲や元気が落ちている

 ✅ 嘔吐をしている

 ✅ 便秘を何度も繰り返している

 ✅ 高齢の猫

 ✅ 腎臓の病気を指摘されたことがある

「元気そうだから大丈夫」と思えるときこそ、一度受診することで安心につながることも多いです。

猫の便秘を繰り返さないためにできること

便秘は、日々の生活の積み重ねで予防できることも多くあります。

ここでは、長い目で見た対策について解説します。

日常で意識したいポイント

 ✅ 十分な水分摂取

 ✅ その猫に合った食事

 ✅ 適度な運動

 ✅ トイレ環境を清潔に保つ

これらは、腸の健康を守る基本です。

シニア猫では定期的なチェックが大切です

年齢を重ねた猫では、便秘が体調変化のサインとして現れることがあります。

定期的な健康チェックによって、腎臓を含めた体の状態を把握することが、便秘予防にもつながります。

まとめ|猫の便秘は体からの「小さなサイン」です

猫の便秘は、すぐに深刻な病気とは限りません。

しかし、体調の変化を知らせる大切なサインの一つです。

「様子を見ていいのか迷う」

そんなときは、一人で抱え込まず、動物病院を受診してください。

飼い主さんの気づきが、猫の健康を守る大きな力になります。