「最近うちの犬、なんだか口が臭い…」
「昔はこんなにニオイしなかったのに、なんで?」
犬の“口臭”は、多くの飼い主さんが一度は経験する悩みです。
とくに、犬は人より口のトラブルが起こりやすい動物であり、口が臭いというサインには必ず何かの原因があります。
口臭は“ただのニオイ”ではなく、口の中や体全体の健康状態を知らせる大切なサインです。
犬の口が臭いときにまず知ってほしいこと

犬の口が臭くなる原因は、本当にさまざまです。
しかし、獣医師として一番お伝えしたいのは、
「口臭を放置すると、痛み・食欲低下・全身への悪影響につながることもある」
という点です。
犬は話すことができないため、
「口が痛い」
「噛みにくい」
「気持ち悪い」
といった不快感を伝えられません。
気づいたときにはトラブルが進行していた…
というケースも珍しくありません。
だからこそ、飼い主さんが“いつもと違う口のニオイ”に気づけることは、愛犬の健康を守るうえでとても大切です。
犬の口が臭くなる主な原因

犬の口臭は、主に以下の5つが関係していることが多いです。
1.歯周病・歯垢・歯石の蓄積
2.口腔内の炎症やケガ
3.食べ物・生活習慣
4.消化器・腎臓など体の病気
5.老化による体質の変化
それぞれ詳しくみていきましょう。
① 歯周病・歯垢・歯石(最も多い原因)
犬の口臭の原因で最も多いのが、歯周病です。
歯垢(プラーク)が数日で歯石になり、そこに細菌が増殖することで、強いニオイが発生します。
犬は人より口内の環境が菌の繁殖に適しており、3歳以上の犬の約8割が歯周病の問題を抱えているとも言われています。
歯周病のサインは以下のようなものです
✅ 口から強いニオイがする
✅ 歯ぐきが赤い、腫れている
✅ よだれが増えた
✅ 歯がぐらつく
✅ 片側だけで噛むしぐさをする
初期のうちは軽い口臭から始まりますが、進行すると痛みが強くなり、
食事が食べられない → 体重減少・体力低下
という悪循環に陥ることもあります。
② 口腔内の炎症・ケガ・異物
口の中に炎症がある場合や、歯茎の傷、異物(木のささくれ・固いおやつによる欠片)が挟まることで、口臭が起きることもあります。
例えば、
✅ おもちゃを噛んで歯ぐきが傷ついた
✅ 口の内側が切れて細菌感染した
✅ 歯が欠けて炎症を起こしている
といったケースです。
軽い炎症でも、細菌が増えるとニオイの原因になります。
③ 食べ物や生活習慣によるもの
犬が口臭を起こす原因には、食生活も大きく関係しています。
✅ 食べこぼしが歯に残りやすい
✅ 柔らかい食事ばかりで歯垢がつきやすい
✅ おやつの種類が偏っている
✅ ゴミ箱をあさる癖がある
✅ 食糞をしてしまう
といった習慣は、ニオイを強くする原因になります。
また、歯磨き習慣がない場合は歯垢が溜まりやすく、若い犬でも口臭がひどくなることがあります。
④ 内臓の病気による口臭
口の中に特に異常がなくても、体の病気が原因で口臭が発生することがあります。
✅ 腎臓病
✅ 肝臓病
✅ 胃腸のトラブル
✅ 糖尿病
これらの病気は、体の代謝がうまくいかず、口の中のニオイにつながる場合があります。
とくに、
「口臭+水をよく飲む」
「口臭+体重減少」
といった組み合わせは注意が必要です。
⑤ 老化による体質の変化
高齢犬では、
✅ 唾液の量が減る
✅ 歯周病が進行しやすい
✅ 消化機能が落ちる
などの理由で口臭が出やすくなります。
シニア期はトラブルが重なりやすい時期なので、日頃のケアや観察がより大切です。
家庭でできる「口臭ケア」と「予防」の方法

口臭を完全にゼロにすることは難しいですが、多くの場合は家庭でのケアで改善できます。
ここでは、今日から始められるシンプルな方法を紹介します。
① 犬用歯ブラシでの歯磨きを習慣に
一番効果的なのは、やはり「歯磨き」です。
犬用歯ブラシと犬専用の歯磨きペーストを使用し、1日1回、最低でも2〜3日に1回の歯磨きを目指しましょう。
いきなり歯ブラシは難しい犬も多いので、
✅ ガーゼで歯を拭く
✅ 指にペーストをつけて舐めさせる
などから始めるとスムーズです。
② デンタルおやつ・デンタルガムを活用
歯磨きが苦手な犬には、
「噛むことで歯垢を落としやすくするデンタルガム」
などを取り入れるのも良い方法です。
ただし、
✅ カロリーの高いもの
✅ 一瞬で飲み込むもの
は逆効果になりやすいため注意しましょう。
③ 食事の見直し
柔らかい食事ばかりだと歯に汚れが溜まりやすくなります。
以下を意識してみましょう
✅ ドライフード中心にする
✅ おやつの内容を見直す
✅ 食器をこまめに洗う
「食べ物の質」と「食べ方」は、口臭にしっかり関係しています。
④ 口の中の観察を習慣に
毎日、たった10秒で構いません。
✅ 歯茎の色
✅ 歯に歯石がついていないか
✅ よだれの量
✅ 以前との変化
こうしたチェックをするだけで、早い段階で異変に気づきやすくなります。
放置は危険!こんな口臭は要注意

犬の口臭の中には、少し様子を見てもいいものと、早めに対応したほうがいいものがあります。
以下のような場合は注意が必要です。
✅ 今までにないほど強烈なニオイ
✅ 歯ぐきが赤い・腫れている
✅ 口元を触ると嫌がる
✅ よだれが増えた
✅ 食べにくそうにする
✅ 片側だけで噛む
✅ 水をよく飲む
✅ 体重が減った
口臭は「全身の健康状態を知らせるサイン」でもあります。
とくに、急にニオイが強くなった場合は注意が必要です。
まとめ:犬の口臭は“健康のサイン”。早めの気づきが愛犬を守る

犬の口が臭いと感じたら、それは愛犬が私たちに送っている大切なサインです。
✅ 原因の多くは「歯周病」
✅ 食べ方・食生活が関係していることも多い
✅ 体の病気が隠れていることもある
✅ 家庭でのケアで改善できることは多い
✅ 早期発見が健康寿命を守るカギ
今日からできるケアをひとつ取り入れるだけでも、愛犬の口の健康状態は大きく変わります。
「最近ちょっと臭うな…」
と感じたら、まずは歯のチェックから始めてみてください。
愛犬の健康は、飼い主さんの“気づき”から守ることができます。
毎日の習慣が、未来を大きく変えていきます。










